今週の実験室:結晶化用タンパク質作成に向けた大腸菌大量培養(4)前半

Laboratory on this week (actually, last week). On the first half of the day, protein expression during the large scale cultivation of E. coli is examined using aliquots of cells. The experiment was followed by an electrophoresis analysis, SDS-PAGE, which will be shown on the next post...

結晶化用タンパク質作成に向けた大腸菌大量培養(3)の続きです。タンパク質発現の前後にサンプリングした少量の大腸菌を使います。超音波によって菌体を破砕して目的タンパク質を溶液中に取り出します。大腸菌も立派な生き物であり、ゲノム上は4000種類ものタンパク質を生産できる情報が記されているそうです。菌体破砕を行えば、大腸菌由来の水溶性タンパク質もたくさん溶出してきます。その中に、どれくらい多く、目的タンパク質が含まれているかを調べます。成分分析はSDS-PAGEと呼ばれる電気泳動により行います。その分析では、タンパク質が分子量(大きさ)に応じて分離がされます。一目で「あっ、これ!」と思うような特徴的なバンドが得られれば、大量発現に成功したことを意味するため、大きな期待を持って大スケールの実験に移行できます。「ん?どこにオレのサンプルが?」という悩ましい分析結果の場合、もしかするとタンパク質が作られていないor作られていても少量あるいは沈殿してしまう”弱い”タンパク質かもしれない…と不安な気持ちがぬぐい切れないままに大スケール実験に進まねばならず、ストレスを感じます。

菌体懸濁(cell suspension):菌体破砕の様子です。タンパク質発現前後(IPTG添加前後)の培養液を、この分析用に5ミリリットルずつサンプリングして菌体を取り分けていました。少量の緩衝液で懸濁し、破砕用に2.0ミリリットル容チューブに移します。

超音波破砕(cell disruption by sonication):少容量向けの菌体破砕機(ソニケーター)によって菌体を破砕します。少量向けとはいえ、メガネ洗浄用より遥かに強力と思われます。故に、無防備に破砕を行うと菌体懸濁液が高温となり、安定でないタンパク質の場合はゆで卵よろしく不可逆凝集の危険があります。そこで、氷水で冷やしながら超音波を浴びせます。ここにも小さなこだわりがあり、「水無しの氷だけ冷却」では、チューブと氷が接していない面積が多く、期待するほど冷えません。水を張っての氷水冷却にすることで、急速な温度上昇を防ぐことが可能です。大腸菌とはいえ、細胞が壊れるくらいですから相応のエネルギーが放出されています(大容量用の超音波破砕機は低温室で利用しています)。パルス状の超音波照射も温度急上昇阻止に重要です(びぃ~~~、ピタッ・・・、びぃ~~~、ピタ・・・、を繰り返す)。

遠心分離(centrifugation):破砕終了後、遠心分離機によって上清と沈殿を分離します。15000回転/分という高速回転で操作します。高速回転でも膨大な熱を生じますので、遠心機には冷却機能が備わっています。
 冷却機能が備わると、途端に機器の価格は3~4倍に跳ね上がります、そして冷凍・冷却機器は必ず寿命を迎えます。本研究室でも、極低温冷凍庫、冷凍庫、冷却機能付き大型遠心分離機と、高い冷凍能力を必要とする装置から順番に天に召されました。上記3種の機器は何とか買い替えることが出来て、ギリギリ研究アクティビティを維持できている状況です。下記の小型高速遠心分離機は風前の灯火で「次故障したらもう直しませんよ!」と業者さんにくぎを刺されています。

遠心分離が終了したら、チューブの上澄み液を注意深くピペットマンで吸い出して新しいチューブに移します。上清を分析にかけますが、分析結果が出るまでは、沈殿物も慌てて捨てずに一時保管しておきます。

pt4の後半のSDS-PAGEは次の記事で紹介し、タンパク質大量発現(発現チェック付き)シリーズを完結させたいと思います。