This does work! On the maintenance of the crystal sample pins for cryo-crystallography.
小さな発見の報告です。ご存じの方にとっては今更…な、お話ですが。
現代のタンパク質結晶のX線回折実験は、極低温(100 K)での実験が標準です。さらに、自動マウントシステムを利用する場合は、シンクロトロン放射光ビームラインで指定されたサンプルピンが必要です。

たいていの場合、結晶をピックアップする軸付きループを土台(ベース)へ差し込み、強力な接着剤で固定して作成します。結構高価です。ベースは金属製のため、壊れることは無さそうですが、結晶をすくうループ先端は非常にもろく、ふとした衝撃で簡単に破損します。フィルム製のループの場合、水分を飛ばそうとしてエアースプレーを噴霧しただけでも壊れます。

室温↔極低温の温度変化に耐えられるように、ベースとループはエポキシ系接着剤で接着します。これが非常に強力で、ループの軸をペンチで力任せに引っ張ると、ベースの軸受け部まで一緒に剥がしてしまいます。実験室で使う有機溶媒程度では、この接着剤を剥がすことが出来ず、これまでは、ループが壊れると廃棄せざるを得ませんでした。

あまりにも不経済だな、と思い、強力接着剤の剥離が可能な商品を探したところ、候補の品物が見つかったので、恐る恐る試してみました。剥離テスト中、ほんのりとオレンジのいい香りがしました。剥離剤の成分を改めて確認すると、オレンジ由来の油性分が使われているようです。そして、試してビックリ、強く固定されていたループ+軸をベースを破壊することなく引きずりだすことに成功しました!簡単に、とは行きませんが。一度、剥離剤を垂らしてしばらく待ち、軽い力で軸を引っ張ってみて取れたらOK、ダメな場合は追加で剥離剤を垂らして再度待ち、ゆっくり引き出してみる…これを2,3度繰り返すと何とか引きずりだせました。


引きずり出した軸でベースの穴に残った接着剤をなるべく書き出し、有機溶媒で洗浄を試みて、新しいループの取り付けてみました。


室温にて、手やペンチで引っ張っても容易にピンがはがれる気配は有りません。まだ本測定には利用していませんが、この剥離剤のおかげで、少しでも多くのサンプルピンがリユースが可能になればと願います。
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