DNA複製関連タンパク質研究論文がプレスリリースとして発表されました

The publication of our research article on the archaeal DNA replication protein complex was announced from the University as a collaborate press release with Kyushu University.

 2021年9月27日付で雑誌社ウェブサイトで出版された古細菌DNA複製タンパク質の構造機能研究論文(以前の記事はこちらです)につきまして、本日、大学からもプレスリリースという形でアナウンスされました。九州大学との共同プレスリリースです。

 アーキア(古細菌)のDNA合成酵素が鋳型DNAの二本鎖を解く機能に貢献!〜アーキア(古細菌)がどのようにDNAを複製するのかを解明〜 (クリックで大学HPへ) 

 生体内のDNA複製は非常に複雑なイベントであり、真核生物であれば数十個あるいはそれ以上のタンパク質因子を必要とする大掛かりなイベントです。しかも、それらのタンパク質群は時間的空間的に厳密に制御されて必要な時に必要な因子が作用して、正確かつ迅速に非常に長いゲノムDNAの複製を達成します。なぜ複製が必要か?単細胞生物も多細胞生物も生命の維持には細胞分裂が必須であり、分裂前にちょうど2倍にゲノムの複製を行い、細胞内で適切な位置に配置された後、いよいよ2個の細胞に分かれる時、それぞれの細胞にもとの細胞と同じゲノムDNAを分配することで遺伝情報を維持し続けます。新型コロナ感染検査の一つとして使われるPCRは、ゲノムに比べると非常に短い領域をターゲットとして、反応を繰り返すことで微量しか存在していなかったターゲットDNAを何億倍にも増やし、目的DNA断片の存在を浮かび上がらせますので、同じDNA合成でありながら、仕組みとしては大きく異なります。

 DNA複製に必要なタンパク質が核内あるいは細胞内であちらこちらに散らばっていると収拾が付かないので、巨大な機能ユニットとしてそれぞれの分子が時には強くあるいは弱く結合して存在している方が合理的な気がする…という発想から生まれた(と私はイメージしている)「レプリソーム」が、様々な解析を通して概念としてではなく、「実体」として存在していることが次々と報告されるようになりました。

 今回の研究は、DNA複製開始初期に機能する2個の機能複合体、ヘリカーゼ複合体(半保存複製のために鋳型となる元の2本鎖DNAを1本鎖にほどく)と新しいDNA鎖を合成するDNAポリメラーゼ複合体が、実際に准安定な相互作用をしており、それぞれのユニットの活性を相互に調節している(大まかには相互に活性化し合う)ことが明らかになりました。我々のシステムでは古細菌固有のタンパク質因子が含まれていますが、構造の観点では役者が一部入れ替わっているものの、真核生物のあるシステムと部分的に似ていることが分かりました。したがって、私達の解析は古細菌固有のシステムの探求に有用なだけでなく、古細菌から真核生物への進化のプロセスについても有用な手掛かりを得る可能性を秘めている、と言えます。こうした理由により、発表された雑誌でも“キラリと光る研究”として取り上げていただき、九州大学、山梨大学の両方にてプレスリリースに至りました。

 まだこれはゴールではありません。新規の知見が得られると、また新たな疑問が湧いてきます。その新しい謎の解明に向けて、また新しい解析をスタートしたいと思います。